【超低周波音による健康被害 】マリアナ・アルヴェス・ペレイラ博士講演会inスロベニア
マリアナ博士による講演会の3つのポイント
- 従来の測定方法の限界
- 低周波・超低周波音は従来のA特性(A-weighting)では正確に測定できず、実際の音圧が大幅に過小評価されているため、低周波・超低周波音による健康被害が見過ごされている。
- 低周波・超低周波音の健康への深刻な影響
- 低周波・超低周波音への暴露は、人間の心臓血管系や呼吸器系に異常を引き起こし、動物では奇形や発育障害が確認されている。
- また、低周波・超低周波音は精神的ストレスや社会的孤立といった症状も引き起こしている。
- 風力発電など、低周波・超低周波音発生源への対策の必要性
- 風力発電をはじめとする様々な発生源から、低周波・超低周波音が発生し、人々の健康や生活に深刻な影響を与えているにもかかわらず、低周波・超低周波音に関する規制や対策は十分ではなく、被害の実態が把握されていない。
- 早急に、低周波・超低周波音の健康影響に関する研究を進め、適切な規制や対策を講じる必要がある。
- 風力発電をはじめとする様々な発生源から、低周波・超低周波音が発生し、人々の健康や生活に深刻な影響を与えているにもかかわらず、低周波・超低周波音に関する規制や対策は十分ではなく、被害の実態が把握されていない。
マリアナ博士について
マリアナ・アルヴェス・ペレイラ、ポルトガル・ルソフォナ大学。
物理学士、医用生体工学修士、環境科学博士の学位を持つ。彼女の研究チームは1980年以来、ILFN(低周波・超低周波音)による振動音響病の研究を行なっている。
超低周波音による健康被害の講演を動画で見る
超低周波音の健康被害:見えない脅威とその深刻な影響
〜 壁をすり抜ける「音」の正体:超低周波音がもたらす健康への影響とは? 〜
マリアナ・アルヴェス・ペレイラ博士の講演では、低周波・超低周波音(ILFN)が従来の測定方法では正確に評価されず、人間や動物の健康に深刻な影響を与えていることが詳細に説明されました。
博士は自身の30年以上にわたる研究を通じて、ILFNが心臓血管系や呼吸器系に異常を引き起こし、精神的ストレスや社会的孤立といった症状をもたらすことを明らかにしました。
はじめに:超低周波音とは?
皆さん、こんにちは!マリアナ・アルヴェス・ペレイラです。今日は、あまり知られていないけれど、私たちの健康に深刻な影響を与える可能性のある「超低周波音(ちょうていしゅうはしおん)」についてお話します。
超低周波音って、ちょっと聞き慣れない言葉ですよね?簡単に言うと、人間の耳では聞こえないくらい低い音のことです。
音は空気の振動で伝わりますが、その振動の速さ(周波数:しゅうはすう)によって音の高さが変わります。周波数が低いほど低い音になり、人間の耳で聞こえるのはだいたい20Hzから20,000Hzくらいまでです。
超低周波音は、この20Hzよりも低い周波数の音なので、私たちは普段その存在に気づくことはありません。
しかも厄介なことに、超低周波音は普通の音と違って、壁や地面を簡単にすり抜けてしまう性質があるんです。
まるで忍者のように、気づかないうちに私たちの生活空間に侵入し、健康に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
例えば、飛行機や電車、自動車、工場の機械、風力発電の風車など、大きな機械が動くと超低周波音が発生し、遠くまで伝わっていきます。
「でも、聞こえない音なら、別に気にしなくても大丈夫じゃない?」そう思うかもしれませんね。
でも、ちょっと待ってください!目に見えない光だって、私たちの体に影響を与えるものがありますよね?例えば、日焼けの原因になる紫外線(しがいせん)や、レントゲンに使われるX線(エックスせん)などです。
音も同じで、聞こえない超低周波音でも、私たちの体に悪影響を及ぼす可能性があることが分かってきたんです。
そこで今日は、超低周波音の正体と、それが私たちの健康にどのような影響を与えるのか、そして、私たちにできる対策について、詳しくお話していきたいと思います。
超低周波音:見えないけれど、無視できない存在
例えば、飛行機や電車、自動車、工場の機械、風力発電の風車など、大きな機械が動くと超低周波音が発生します。
「でも、聞こえない音なら、別に気にしなくても大丈夫じゃない?」そう思うかもしれませんね。
でも、ちょっと待ってください!目に見えない光だって、私たちの体に影響を与えるものがありますよね?例えば、日焼けの原因になる紫外線(しがいせん)や、レントゲンに使われるX線(エックスせん)などです。
音も同じで、聞こえない超低周波音でも、私たちの体に悪影響を及ぼす可能性があることが分かってきたんです。
従来の騒音測定方法の問題点:A特性
これまで、騒音の大きさを測る時には「A特性(エーとくせい)」という方法がよく使われてきました。
これは、人間の耳で聞こえやすい音の大きさを基準にして騒音レベルを測る方法です。
でも、このA特性は、超低周波音のように低い音の大きさを正確に測ることができません。
例えば、10Hzの超低周波音をA特性で測ると、実際の大きさよりも70dB(デシベル:音の大きさの単位)も小さく表示されてしまうんです。
これは、体重計に乗って自分の体重を測る時に、実際よりもずっと軽い数字が表示されてしまうようなものです。
A特性で測ると、超低周波音の影響が過小評価されてしまう可能性がある、ということですね。
低周波・超低周波音の人体への影響
心臓血管の異常
低周波・超低周波音に曝されることで、心臓や血管にも大きな影響が出ます。心膜という心臓を包む膜が通常よりも厚くなります。正常な心膜の厚さは0.5ミリメートル未満ですが、低周波・超低周波音に曝された人では2.3ミリメートルにもなります。これにより、血管の壁も厚くなり、血液の流れが悪くなります。結果として、心臓発作のリスクが高まります。
呼吸器への影響
低周波・超低周波音は肺にも影響を与えます。ラットの実験では、肺胞の壁が厚くなり、酸素と二酸化炭素の交換がうまく行えなくなりました。これにより、呼吸困難や気管支炎などの症状が現れます。
超低周波音の影響:振動音響病
私たちの研究チームは、長年、超低周波音の人体への影響について研究してきました。
その結果、超低周波音に長時間さらされると、「振動音響病(しんどうおんきょうびょう):振動音響病」という病気になる可能性があることが分かってきました。
振動音響病は、色々な症状が現れる病気です。例えば、
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
- 睡眠障害
- イライラしやすくなる
- 集中力の低下
- 呼吸困難
- 胸の痛み
- 動悸(どうき)
- 筋肉や関節の痛み
- 皮膚のかゆみ
- 鼻血
など、本当に様々な症状が現れます。
しかも、これらの症状は、最初はあまり目立たないことが多いんです。そのため、「気のせいかな?」と思ってしまったり、他の病気と間違われてしまうこともあります。
でも、超低周波音にさらされ続けると、症状はどんどん悪化していく可能性があります。
振動音響病(振動音響病)の発見:ポルトガル空軍基地での調査
振動音響病が初めて発見されたのは、1980年代のポルトガルです。
ポルトガル空軍基地で働く人たちの中に、原因不明の病気にかかる人が unusually high rateでいることが分かりました。
その病気の症状は、頭痛、めまい、吐き気、不眠、イライラしやすくなる、集中力の低下など、様々でした。
そこで、カステロ・ブランコ博士というお医者さんが、基地で働く人たちの健康状態を詳しく調べることにしました。
その結果、病気の原因が、飛行機のエンジンなどから発生する超低周波音であることが分かったのです。
振動音響病(振動音響病)のメカニズム:細胞レベルでの影響
超低周波音が人体に悪影響を与えるメカニズムは、まだ完全には解明されていません。
しかし、私たちの研究によって、超低周波音が細胞レベルで影響を与えることが分かってきました。
細胞は、私たちの体を構成する最小単位ですが、実はとても複雑な構造をしています。
細胞の中には、色々な種類のタンパク質(たんぱくしつ)でできた骨組みのようなものがあって、細胞の形を維持したり、細胞同士がくっつくのを助けたりしています。
超低周波音は、この細胞の骨組みに影響を与え、細胞の形を変えたり、細胞同士の結合を弱めたりする可能性があると考えられています。
その結果、様々な臓器(ぞうき)や組織(そしき)に異常が起こり、振動音響病の症状が現れるのではないかと考えられています。
超低周波音の影響:動物実験からの知見
私たちは、ラットを使った動物実験でも、超低周波音の悪影響を確認しています。
ラットを、人間が職場にいるのと同じくらいの時間(1日8時間、週5日間)、超低周波音にさらすと、様々な症状が現れました。
例えば、
- 肺の組織が厚くなる
- 気管の繊毛(せんもう)がなくなる
- 耳の蝸牛(かぎゅう)の繊毛がなくなる
などです。
これらの変化は、人間で振動音響病が起きるメカニズムと関係している可能性があります。
例えば、肺の組織が厚くなると、呼吸が苦しくなったり、酸素を取り込みにくくなったりします。
気管の繊毛は、異物や細菌を体外に排出する役割をしていますが、繊毛がなくなると、呼吸器の感染症にかかりやすくなる可能性があります。
耳の蝸牛の繊毛は、音を感知する役割をしていますが、繊毛がなくなると、音が聞こえにくくなったり、耳鳴りがしたりする可能性があります。
超低周波音の影響:風力発電のケース
最近では、風力発電の風車から発生する超低周波音が問題になっています。
風力発電は、地球温暖化対策として注目されていますが、風車の近くに住む人たちの中には、超低周波音の影響で健康被害を訴える人が出ているんです。
例えば、
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
- 睡眠障害
- イライラしやすくなる
- 集中力の低下
などの症状を訴える人がいます。
風力発電の風車から発生する超低周波音は、他の発生源からの超低周波音と比べて、低い周波数のものが多く、人体への影響が大きい可能性が指摘されています。
超低周波音の影響:実例紹介
風車騒音の被害者の例をいくつかご紹介します。
デンマークのミンク農家
デンマークのあるミンク農家では、風力発電の風車が設置されてから、ミンクの流産や死産が増加しました。
また、農家の人たちも、頭痛やめまい、吐き気などの症状を訴えるようになりました。
ポルトガルの闘牛士
ポルトガルの闘牛士は、自宅の近くに風力発電の風車が設置されてから、頭痛、めまい、吐き気、不眠などの症状に悩まされるようになりました。
また、飼っている馬も、足の骨が変形する「ボクシーフット」という症状を発症しました。
ドイツの湖畔の住人
ドイツの湖畔に住む人は、近くに風力発電の風車が設置されてから、頭痛、めまい、吐き気、不眠などの症状に悩まされるようになりました。
寝室を地下室に移しましたが、それでも症状は改善せず、最終的には家を出て行かざるを得なくなりました。
オーストラリアのブルーマウンテンの住人
オーストラリアのブルーマウンテンに住む人は、近くに風力発電の風車が設置されてから、頭痛、めまい、吐き気、不眠などの症状に悩まされるようになりました。
家の前に壁を作ったり、寝室をキッチンに移したりしましたが、症状は改善せず、最終的には家を出て行かざるを得なくなりました。
アイルランドの家族
アイルランドのある家族は、近くに風力発電の風車が設置されてから、9歳の子どもがてんかんを発症し、19歳の息子がPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されました。
他にも、PTSDと診断された人がいます。
これらの例は、風力発電の風車から発生する超低周波音が、人々の健康に深刻な影響を与える可能性を示しています。
超低周波音:対策の必要性
超低周波音は、私たちの健康に深刻な影響を与える可能性があるにもかかわらず、日本ではまだ十分な対策が取られていません。
例えば、風力発電の風車の設置基準には、超低周波音に関する規制がないため、風車の近くに住む人たちが、健康被害のリスクにさらされています。
また、工場や建設現場など、他の発生源からの超低周波音についても、規制が不十分です。
超低周波音の人体への影響をもっと詳しく調べるためには、さらなる研究が必要です。
そして、その結果に基づいて、超低周波音から人々の健康を守るための対策を早急に講じる必要があります。
超低周波音:私たちにできること
超低周波音は、目に見えないし、聞こえないので、私たちがその存在に気づくことは難しいです。
でも、もしも、原因不明の体調不良が続いている場合は、超低周波音の影響を疑ってみることも大切です。
風力発電の風車や工場などの近くに引っ越す場合は、事前に超低周波音の発生源について調べておくことも大切です。
超低周波音は、私たちの健康に深刻な影響を与える可能性がある、ということを知っておいてください。
そして、自分自身や家族の健康を守るために、超低周波音についてもっと関心を持って、適切な対策を心がけましょう。
※ この記事は、マリアナ・アルヴェス・ペレイラ博士の講演会の内容を元に作成しました。
マリアナ・アルヴェス・ペレイラ
ポルトガル・ルソフォナ大学
物理学士、医用生体工学修士、環境科学博士
彼女の研究チームは1980年以来、低周波・超低周波音による振動音響病の研究を行っています。